蝉鳴く季節に…
「俺、全然気にしてないよ?むしろ幸せになって欲しい。矢代にも、香奈子にも。香奈子は何か罪悪感みたいなの感じてたみたいでさ」

「…そう…なんだ」

「でもさ、謝られてもわかんないよ。香奈子も矢代も悪くないだろ?それ言ったらあいつ、いきなりしゃがんで泣き出してさ」





杉山くんの膝に顔を埋めて泣いていた彼女。

杉山くんは、悲しそうに頭を撫でてあげていた。







「俺、その時に水谷が来てる事に気付いてさ」

「そうだったの?」

「うん、あの後すぐ追い掛けたんだ」





……嘘。


私、全然気が付かなかった。

杉山くん、追い掛けて来てくれてたの?








「俺、走るのには自信あったんだ。なのにさ…体力落ちててさ」





………杉山くん。






「走ってたつもりなんだけどさ…」






杉山くん……。







「追い付けなかったんだ」







杉山くん!







私、振り向いていれば良かったね。

あんなに走らなきゃ良かったね。



立ち止まっていれば良かった!




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