蝉鳴く季節に…
きっと全てはわからないよ。


だって、それを全て伝えきれるだけの表現力が、私には無いから。




だからきっと、わからないよ。










杉山くん。


あの時ほど私は、あなたが生きているんだと確かめられた事はないかもしれない。






唇から伝わる熱………。



生きているって、熱いんだって感じたんだ。


















お互いの唇が離れた後、杉山くんは優しく私の髪を撫でてくれた。




「泊まっていこうかな…」

「ふ…発情した?」






赤くなる私を見て笑って、杉山くんは更に強く抱きしめてくれた。







「水谷…」

「ん?」

「…………で…いて」

「え?…何?聞こえないよ」





聞き返した私に、杉山くんは何でもないよと笑った。












“……で…いて”






それしか聞こえなかったけど、あの時の私にはわからなかったけれど……。






今ならわかる。





杉山くんの、あの小さな呟き……何でもないと笑ってごまかした呟きは。








“最後まで側にいて”




だったんだよね。
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