蝉鳴く季節に…
16
私は、毎日学校が終わってから、杉山くんの待つ病院へ行くのが日課になっていた。






「こんにちわ」




病室に顔を出すと、杉山くんは笑って迎えてくれる。




でも、私は不安を感じてもいたんだ。





毎日、杉山くんを見ている私は、多分、同級生の誰よりも彼の変化を感じとれていたに違いない。




杉山くんは、熱を出して横になる時が多くなっていた。


白い肌は更に青みを帯びていき、熱が出ているはずなのに、どうしてそんなに白いのかって……そんな疑問ばかりが頭をよぎり、聞けないままに時は過ぎる。




杉山くんは病気なんだと、思い知らされていく。






でも笑うから。

杉山くんは笑うから。




その笑顔が弱々しくて、泣きそうになる自分がいても……私も笑った…。



そうしなきゃいけない気持ちになっていたんだ。







「ごめんな?昨日から何か身体が重くてさ」



太ったのかもと、杉山くんは笑う。







杉山くんの笑顔……。
表情……。




頬骨が、目立つ様になっていた。
首元も、鎖骨が浮き出ていた。



……太ってなんか……いないよ?
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