蝉鳴く季節に…
名前が一人だけって事は、一人部屋なんだ。






途端、心臓がばくばくしだした。

緊張する!






何て挨拶すればいいの?

やっぱり初めましてかな。
だよね?初対面だし……。



誰?とか聞かれる前に自己紹介した方がいいのかな。


あれ?自己紹介って自分からするの?
どこまで紹介すればいいの?






……わかんなくなってきた。







紙袋だけドアに掛けて帰っちゃおうかな。


でも…杉山夏生を見てみたいし。


でもでも、やっぱり一人だと不安だよ。



どうしよう……。







病室のドアの前、きょろきょろしながら立っている私は、周りから見たら相当挙動不審に見えたと思う。




「どうしました?」




………うわぁ。


通りかかった中年看護師さんに声をかけられてしまった。







看護師さんは、病室のプレートをちらりと見た後、私へと視線を戻してきた。








「杉山さんのお友達?」




友達……って言えるのかな
初対面なんだけど……。



でも、制服で来て良かった。
でなきゃ絶対、不審者に見えたかも。





「クラスメイトです。担任の先生に届け物を頼まれて…」




不審者ではありませんから。






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