蝉鳴く季節に…
ゆったりとした仕草で、缶を握る杉山くん。


左手に持ち替え、右手の指をプルタブにかける。




細い指………。










「……あれ?」






杉山くんが、苦笑いした。


私は顔を上げる。








「あれ?この缶……プルタブ硬くね?」






杉山くんの指、昨日までは綺麗にプルタブを引き上げてた指……。








今日は………今日は…。







「あれ…おかしいな。昨日は俺、開けられたよな?」






カチン…カチン……。



杉山くんの指先に逆らい、跳ね戻るプルタブ。


銀色の細いプルタブ。








杉山くん……。


杉山くん…杉山くん!





開けなくていいよっ!

開かないならいいよ!


もういいから!








指が…………震えてるんだよ………杉山くん。


杉山くんの手が震えてるよ!







カチンカチンカチン……。



響く音は残酷なリズムで、私にとっては残酷なリズムで……。



耳を塞ぎたくなる。








いいから……。


もういい。



杉山くん……もう止めて!



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