蝉鳴く季節に…
屋上には、風が吹いていた。


所狭しと並んで干された白いシーツが、時折バサリと音を立てている。








見上げた空は、青かった……。




高くて澄んでいて、何もかもを包み込んで、許容して、受け止めて……消してくれそうなくらい大きくて……。







「うっ…え……ふ…」



声が溢れた。






杉山くん……。









「うあっ……ふえ……う…うあああ……!!」







はためくシーツの間に隠れて、私は泣いた。



泣きたかった。


心が……痛くて……。

痛くて、痛くて!










杉山くん、杉山くん。



私は弱虫だね。


何もできなくて、こうして隠れて泣く事しかできないんだ。





コーヒーなんか飲みたくないよ。


私…私は…杉山くんが開けてくれたジュースが飲みたいよ。




ねぇ…私、わがままかな?
贅沢なのかな?



杉山くんと、ずっと一緒にいたいだけなのに、それはわがままなのかな?






一緒にいれる。


信じてる…信じたいのに。




プルタブを開けられない杉山くんの姿が離れないの!




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