蝉鳴く季節に…
17
そうして訪れた、終業式の日。



明日から夏休みだと浮かれる教室を後にし、私は病院へと向かう。







夏休みになったら、いつもよりも長く杉山くんといれる。


たくさん話をして、たくさん笑って、そうして過ごしたい。




早く杉山くんの病気が治る様に、毎日行って楽しい話をするんだ。



杉山くんが淋しくない様に、悲しくならない様に。



私は上手な励ましの言葉はわからないけれど、そばにいる事はできるから。





杉山くん、元気になってくれるかな?





私、杉山くんとしたい事がたくさんある。

行きたい所もあるの。



いっぱいいっぱいあるの。





杉山くんが走る姿も見たい。





汗をたくさんかいて、蜃気楼になるくらいに走る姿が見たいんだ。









夏の盛り、大きな空。


まだ陽が高い昼前、熱気にあてられた様に、蝉が鳴いていた。




杉山くんが言ってた。

蝉は八年土に潜り、ひと夏の太陽を浴びる為に出てくるんだって。




それを聞くまで、私は蝉が苦手だった。


でも今は、その狂う程の高い声が、眩しくさえ感じる。




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