意地悪上司の笑顔の裏は。
これは、一体、どういう状況?!
残業中のオフィス、上司と二人っきり、密着しそうなほど近い距離。
心臓の音がうるさい。顔だってきっと真っ赤だ。これが彼なりの冗談だとしたら、本当にタチが悪い。
山上係長は、動けなくなっている私の耳元に口を寄せると、とんでもないことを囁いた。
「まあ、いても奪うけど」
私から離れると、にっこりと笑う。惚れ惚れするほど鮮やかな笑顔に、ドキリともしたし、怖くもなった。
「ぶ、物騒なことを言わないでください!」
パーソナルスペースを確保した私は、やっと声を出すことができた。
恥ずかしくて顔を見ることもできないとか、もう本当に情けない。
山上係長を見ると、散らばった書類を楽しそうに拾っていた。