では、同居でお願いします
(いくら従兄弟でも問題ありじゃないの!?)

首を振り続ける私に、裕哉は益々眉根を寄せる。

「でも僕の仕事の都合で残業することも多いだろうし、そうなると帰りも心配だよ。ああ、じゃあさ、家事を手伝ってくれないかな?」

「家事を?」

「そう。僕も忙しくて家のことは何も出来ていないから、海音ちゃんが手伝ってくれると助かるんだ。ね、家事が家賃でどうだろう?」

「どうだろうって……そんな叔父さんや親がどういうか……」

家賃タダには正直なところ、少しばかり心が惹かれている。
裕哉なら優しいから一緒にいても問題はなさそうだ。

ただ、男女で一つ屋根の下に住むのは、いとこ同士としてもいかがなものなのか。外聞や親のことを考えるとすぐに「イイネ!」とは言えない。

しかし私の懸念などおかまいなしなのか、裕哉はおもむろにどこかへと電話をかけはじめた。

「あ、おばさん、裕哉です。そっちは夕方ですか? うん、そうだよ。今日は海音ちゃんの住まいのことで相談なんだけどね――」

(え……? ま、待って!! それ、私の親にかけてるの!?)

まだ親には前の会社が倒産したことも言っていない。
向こうの事業も軌道に乗っていないのに、娘がたった三ヶ月で無職になったなど、親に言えるわけもなかった。

(なのに何を勝手に電話してくれちゃってるの!!)

ぎゃーっと叫びたいのに、裕哉は呑気に「あはは、そうなんだ。おばさんも頑張ってくださいね」なんて軽く告げて通話を切った。
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