では、同居でお願いします

(今頃気がつくなんて、どれだけ私は鈍いんだろう……)

自分の鈍さに笑えてしまった。


諸岡さんの行動は、すべて裕哉のためなのだ。

そのことを誤解しないように、ちゃんと頭に焼き付けて関わらなければと、彼の柔らかな笑顔を見ながら頭を下げる。

「今日はありがとうございました」

「はい、ではまた明日です」

ポンポンと、諸岡さんは私の頭を優しく叩いた。

いつも裕哉がやってくれていたように。


その途端、どうしようもないほど裕哉が恋しくなってしまった。


諸岡さんが車に乗り込んで、軽く手を上げてくれるのを、笑顔で見送ったけれど、部屋に戻った私は、顔を洗いながら少し泣いた。


諸岡さんは優しい。けれどそれは私の為じゃない。

そして彼は裕哉ではない。


その当たり前のことが、今更ながら悲しかった。
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