では、同居でお願いします
諸岡さんとそんな話があった二日後、私は裕哉の部屋を訪れていた。
幸い、あの日以来藤川がマンションで待ち伏せすることもなかったが、心配してくれた諸岡さんが毎回家まで車で送ってくれるのは、やはり心強かった。
(諸岡さんとなら、偽の恋人でもうまくやれそうだな)
そう思うのに、どうしても裕哉の部屋を訪れる時までは、「付き合う」ということをしたくはなかった。
私のマンションまで迎えに来てくれた裕哉は、「海音ちゃんとプライベートで会えるの久しぶりだね」とても嬉しそうに笑ってくれていた。
(こんな笑い方をするなんて、ずるいよ)
文句を言いたくなる。
まるで犬が、ご主人様が戻ってきて嬉しくて喜んでいるような無邪気な笑みなのだ。つい「可愛い」と思ってしまう。
「あのさ、海音ちゃん……その……僕の部屋、見ても……」
玄関のドアを開ける時、私を振り返り裕哉は眉を下げる。
「はいはい、怒らないから安心して」
「約束だよ?」
念押ししてくる裕哉を見て、これは相当だな、と覚悟を決めた。