では、同居でお願いします
ガチャッと扉が開かれる音に、思わず涙が出そうになった。
少し前までは見慣れていたドア。私が自由に開くことができていたドア。今は、招かれなければ入ることもできない。
やっぱりもっと裕哉の側にいたい。
嘘でも諸岡さんと恋人のフリをしたくない。
誰かのものになんてなって欲しくない。
浮かんで来るのは全て我欲ばかりの醜い感情。
その全てを押し込んで、懐かしい玄関へと足を踏み込み、ホッと笑みを浮かべた。
「…………うん、安定の散らかりようだね」
部屋の中は、わあああ、と言いたくなるほど散らかっていた。
玄関には出しっぱなしの靴多数。
(早速の安定感)
廊下は雪崩の起きた新聞や雑誌。
(なぜすぐ崩れる置き方をする)
なぜか点々と落ちている服やタオル。
(遭難防止の帰り道の目印?)
リビングに至っては、やはり泥棒が入った後としか思えない。
(見慣れた光景)
どこをどうすれば、短期間でここまで散らかせるのか、逆に聞いてみたい。
普通は開けた引き出しは邪魔になるから閉じるだろうし、脱いだ服など、せめて椅子やソファーに掛ける程度のことはしそうだ。
床に点々と脱ぎ散らかす人は裕哉くらいしかいないのではないか。