では、同居でお願いします
ある意味、才能じゃないかと思う。
散らかしの才能。

けれどこの散らかりようがやけに嬉しかった。

何も変わっていないことが、嬉しかったのだ。

「うわあ、海音ちゃん、笑ってる……絶対にそれ、怒ってる笑いでしょ?」

ビクつく裕哉が可愛すぎて、私は心の中で諸手を挙げる。

(もう……絶対に敵わない。この人には、全く敵わないよ……)

好きな気持ちが溢れてしまう。


イケメンエリート社長なのに、この可愛さ。ずるすぎるでしょう。


私は心から笑いながら、裕哉の部屋に足を踏み入れた。
落ちている物をふみつけないように。

「さあ、まずは片付けてから、コーヒーの淹れ方をレクチャーしましょう」

「よろしくお願いします」

「では服を集めて洗濯機のところに運んで」

「うん、了解」

動き始めた裕哉を見送り、私は散乱する雑誌と新聞紙を手早く整理して片付けていく。

これが終われば物が溢れて開きっぱなしのキャビネットの中、それからキッチン……。

ここに引っ越してきた日のことを思い出す。
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