では、同居でお願いします
裕哉が抱きしめてくれる腕は、「いとこ」としてだと理解している。

この手はもうすぐ彼女のものになってしまうことも、ちゃんとわかっている。

私が諸岡さんとお付き合いを始めてしまえば、きっと裕哉は従兄弟という理由では一切手を触れてはくれなくなるだろう。

真面目な裕哉の性格からすれば当然だし、それでなくても一番信頼している部下の彼女に手を触れることなど、裕哉は絶対にしないだろう。


(でも、まだ許してください……)


まだ彼女とは付き合っていないと、諸岡さんは言っていたでしょ?
私もまだ付き合っていないでしょ?
それなら、今はまだ、この腕を借りていても許してくれますか?

自分勝手な理論を心の中で呟いて、私は裕哉に抱きしめられていた。


(従兄弟として気遣ってくれているだけ。でも……このことは秘密にしようね、裕ちゃん)


神様との今だけの秘密を許してくださいね。


このまま、涙が永遠に止まらなければいいのにと、そんなことを願いながら、私は裕哉の腕の中で泣き続けていた。
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