では、同居でお願いします
私の気持ちが落ち着くまでずっと側にいてくれた裕哉は、「大丈夫?」と聞いてくれたけれど、詮索はしてこなかった。
気を取り直し部屋を片付け終えたのは二時間後。
昼食を挟み、ようやく本題のコーヒーの淹れ方の説明に入った。
コーヒーの淹れ方については、裕哉はすぐに手順を覚えた。
手順は覚えたのだが……。
「これ、後片付けもあるよね?」
「……うん、あるね」
「片付けが面倒そうにみえるよね?」
「みえるというか、わりと、面倒」
「僕が全部するんだよね?」
「…………インスタントで手を打つ?」
「え~、どうしよう」
ううん、と唸る裕哉に思い切り突っ込みたくなる。
(「え~、どうしよう」じゃない! どう考えても片付けしないよね! きっと一度淹れたら、全部放置になるよね?)
この人の「これからはコーヒーくらい淹れられるように――」と言う言葉を信じてはいけない。
コーヒーよりも片付けを心配している時点で、彼の決心がペラッペラに薄いことが明白だ。