では、同居でお願いします
「裕ちゃん、仕事が忙しいから自分で片付けるのは難しいだろうし、ハウスキーパーさんに入ってもらったらどうかな?」

「え~、でも知らない人に留守の間に入られるのはなぁ」

「え~じゃないでしょ! きっと来週にはこの部屋も元の木阿弥なるに決まってる。本当にどうにかしないと」

「う~ん。あ、それよりも海音ちゃん、あのマンション、不用心じゃない? 気になってるんだけど」

あからさまに話を逸らせた。

自分の分が悪くなった途端のあざといほどの話題転換、それも上手く行っているとは言い難い。


やることが子供じみている。


会社にいるのは別人ではないかと、疑うほどにプライベートの裕哉は完全にダメ人間だ。

けれどこの話題転換に、私の方が追い込まれた。


――社長はあなたのことを気にかけている。


諸岡さんが告げたあの言葉が耳に甦った。

ここで心配を煽るようなことは言えない。

藤川のことには不安があったけれど、そんな話を裕哉にしたって心配をかけるだけ。それに裕哉には藤川のことなど知られたくなかった。
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