では、同居でお願いします

「すみません、愚痴に付き合ってもらってしまって。ただずっと誰かに聞いてもらいたかったようです。話すことができて、少しすっきりしました」

「紀ノ川さん、もう彼女に気持ちは伝えないのですか?」

「ええ? 彼氏がいるんですよ?」

「でも紀ノ川さん、本当の自分の気持ちはまだ一度も伝えていないじゃないですか。ダメでも最後になっても、本気で伝えた方がいいと思います」

「本気で……ですか」

顎に手をあてて考え込んだ紀ノ川さんに、私は勢い込んで告げた。

「きっと本当の気持ちは、伝えない限り自分の中に住み続けて、ずっと相手を忘れられない。言葉にして相手に届けて、初めて昇華できるんじゃないかなって。紀ノ川さん、ずっと心の中で彼女に何度も告白しているんじゃないですか? それを、一度だけ伝えてみたら、どうかなって……」

ハタと我に返った私は、あまりにも踏み込んだことを言っていたと気がつき、青ざめる。

「す、すみません……事情も詳しく知らないのに、私ってば、勝手なことばかり」

「いえ、ありがとうございます。そんな風に考えたことはなかったので、驚きました」

フッと笑った紀ノ川さんは、顔を上げて私を見つめた。
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