では、同居でお願いします
同居の話が出て二日後、日曜日。
朝から夏らしい良い天気だった。
荷造りを終えた私は、まだ急展開について行けないまま考えていた。
リーダーシップの執れる人は、多少なりとも強引なところがあるものだ。
当然だ。
人を導き、率いていくのだから、優柔不断ではいられない。時には強硬に強引にならざるを得ないこともあるだろう。
「でもね、強引すぎやしませんか?」
同居の話が出た翌日には、裕哉の手配により引っ越し社が段ボールを届けに来て、その翌日、つまり今日、お任せパックだとかいうコースで引っ越し社の方々が全部荷造りをして荷物を運び出してしまった。
そして今、慌ただしく引っ越しを終えて裕哉の部屋に向かうところだ。
「善は急げって言うだろう? 荷物はこれで全部?」
問いかけてきた裕哉に軽く頷く。
「うん、ほとんどトラックで運んでもらったから」
「そう、じゃあ行こうか」
貴重品やすぐに必要な着替えなどを入れた私のバッグを手にした裕哉に促されて部屋を後にする。
美奈と一緒に楽しい時も悲しい時もたくさん過ごしてきた部屋も、荷物がなくなれば唯の容れ物にしか見えなくて、それが寂しかった。
裕哉の車に乗り込んだ時、もう一度マンションを見上げる。
さっきまで自分のいた部屋のベランダに小さく頭を下げた。