では、同居でお願いします

このまま、諸岡さんと嘘のお付き合いを始めてしまったら、きっと裕哉を想い続けてしまう。

諸岡さんが彼氏になってしまったら、新しい恋もできないから、ずっとずっと裕哉を心の中で想ってしまう。

私の中でムクムクと大きくなる気持ちを持て余す。

自分で考えたくせに、戸惑いに揺れる。


(いつか……。ずっと先だろうけれど、いつか裕ちゃんに、この想いを伝えることができたらいいな……)

その時は、笑っていい思い出だなんて、軽く言えるようになっているのかな。

裕哉を忘れてしまえるのだろうか。

それはそれでとても寂しい気がしてしまった。


その後、紀ノ川さんと並んでマンションまで戻り、そして私は気がつく。


マンションの前に藤川が立っていることに。


血の気が引き、悪寒が背中を走り抜けた。

「どうして……また……」

いつまで私を縛り付けるのだろう。

どこまでこの男は踏み込んでくるつもりなのか、恐ろしくて小さく震えた。
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