では、同居でお願いします
「お疲れ様です」
二人を迎えて頭を下げる私に、裕哉が声をかける。
「井波さん、すぐ社長室に来て」
「……はい」
今まで見たことないほど裕哉の顔が強ばっている。とてもイヤな予感がして私の顔も強ばる。
何か重大なミスでもしてしまっていたのだろうか。
今日やっていた仕事を振り返ってみるが、何が悪かったのかわからない。けれど裕哉の放つ空気がピリピリしている。
裕哉の後ろに続いている諸岡さんが、私に目配せをしながら何度も頷いてみせる。
大丈夫だよと言ってくれている感じがするが、なんのことを言っているのか見当がつかないだけに不安になってしまう。
彼らに続いて社長室に入る。
「仁、席を外して」
低い声の裕哉に対して、諸岡さんは首を振った。
「いえ、私も同席いたします。私も関係していることですので」
凜と言い放つ諸岡さんは、眼鏡を押し上げながらもどこか緊張の面差しだ。
(な、何? 私、何をしちゃったの!?)
心当たりがないだけに、どうして呼び出されたのかが怖くて仕方ない。