では、同居でお願いします
使っていない会議室に入った途端、壁際に追いやられ、私は更なる危機が迫ったことを知る。
(ぜ……全然……窮地を脱出してなかった!)
窮鼠だ。
しかし追い詰めてくるのは猫などではなく猛獣のライオン。
噛むどころの話ではない。
「井波さん、わたしとお付き合いくださいますよね? 言いましたよね?」
確認などではない、ほぼ脅迫。
「い、言いましたけど……」
「けど? なんでしょうか?」
「う……あの……いつから、とか詳しいことは……」
「来週からとおっしゃいましたが? 何かご不明点でも?」
(これ、付き合うとかの話じゃないよね!? ご不明点とか聞いちゃうあたり、完全にビジネスでしかないですよね!)
でも、と思い返す。
諸岡さんにとってはビジネスと同意なのだろう。
裕哉のために「ビジネス」の一環として付き合うという考えが出てきたのだから、この関係に甘い感情などないのだ。