では、同居でお願いします
「諸岡さんの仕事にはまだまだ追いつけないよ。少しでも助けになれたらいいのに……」

何でもそつなくこなせるのは、諸岡さんだ。

どんな時でも穏やかな空気を身にまとい、それでいてビシビシと仕事をこなしていく。
当面の目標は彼に一センチでも近づくことだ。それが裕哉の助けになるから。

浮遊感をとめてエレベーターは最上階に到着する。
扉が開く時、裕哉は頭をトントンと優しく叩いてくれた。

「仁と同じペースで仕事をしていたら倒れてしまうさ。海音ちゃんの出来ることを出来る範囲でしてくれたら、僕はそれでいい。海音ちゃんが来てくれて助かってるよ」

エレベーターを先立って降りた裕哉の背中を見つめる。

なんて優しい人なのだろう。なんて気遣いのできる人なのだろう。
こんな風に言ってくれるボスの下で働くことができて幸せすぎる。

不覚にも泣きそうになった。

(本当に……神様っているんですね!)

この人の為なら、どんな労苦だって厭わない。

そんな思いを胸に抱きながら、部屋の前で私が来るのを待ってくれている裕哉の元に小走りで駆け寄った。


ガチャリと鍵が開かれて、そこから私の生活が大きく変わることなど、その時は知ることもなく、裕哉の部屋に入れることに胸を高鳴らせていた。
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