では、同居でお願いします
押し潰されるアルミ缶の気持ちを思い知り、同情してしまう。

商談としてなら、これいけるかもと申し出てみる。

「あの……クーリングオフという制度が……」

「認めません」

「……ですか」


やっぱりダメだった。


この方の攻略方法が見つかりません。


しかしここで挫けてはいけない。押し負かされてなるものかと抵抗を試みる。

「私も諸岡さんもやはり本当に好きな人と付き合うべきだと思い直したのです。だからこんな中途半端なお付き合いはできないと思います」

言った途端に諸岡さんの猛獣度がアップした。

壁ドン状態から、そのままグイと顔を思い切り近寄せるや、凄い鋭い眼差しで見つめてきた。

今にも喉笛を食い破りそうな眼差しに、憐れな草食動物の私は絶体絶命を覚悟して脂汗を流す。

「井波さん、あなたは全く気がついていなかったのですね」

「……ええっと……何に、でしょうか?」

喉に声が引っかかって掠れてしまう。

怯えきっている私の目を、更に怯えさせる鋭さで見つめた諸岡さんは溜息をこぼす。
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