では、同居でお願いします
「……私が本気であなたを好きだと、全く気がついていなかったのですね」

(んはあっ!?)

喉の奥が緊張で詰まっていなければ、奇妙な叫びを上げていたことだろう。


いやいや、それは絶対にない!

言い切ってもいいです、絶対にないと。


思い返しても、そんな甘い空気になったことなどなければ、そんな話をしたこともない。

どこをどう辿れば、諸岡さんが私を好きだということに行き着くのか教えていただきたいほどだ。

さっきまでだって、全然恋人と話す言葉じゃなかったのに、いきなりこの人は何をいいだすのやら。

驚きすぎて目がまん丸になっている私に、諸岡さんは呆れたように告げた。

「全く気がついていないとは……そうですか」

(呆れられることなの!? こっちが悪い的な流れになってるけど、気がつくのは無理よね? 無理ですよね?)

気がつくと言うよりは、今でも信じられないのに。

それよりも、できればこの二人きりの状態から早く抜け出したい。

「私は初めて井波さんを社長から紹介された時には、コネ入社の若い子など使えないだろうと、そんな先入観であなたを見てしまいました」


(なんか回想入ってる――!)
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