では、同居でお願いします
目を疑う。
今、絶賛我が目を疑っている。
目の前に広がる光景に目を疑いまくっている。
「裕……ちゃん?」
これが裕哉の部屋なのか。
こんなこと、想像もしなかった。
いや、でも会社でいつも遅くまでバリバリと仕事をしている姿を近くで見ていたのだから、考えてみれば不思議ではないかもしれない。
そうか、とは頭のどこか遠ぉぉぉくの片隅で考えるけれど。
けれど……思考がついていかなかった。
必要以上に広い大理石張りの玄関で靴を脱いだ裕哉が振り返り、「海音ちゃん、ちょっと散らかっているけどどうぞ入って」と告げる。
(ちょっと!? これが、ちょっと!?)
――つっこむべきなの? これはつっこみ待ちなの?
そう思ったのも仕方がないほど、裕哉の部屋は想像を絶するほど散らかっていたのだ。
いつもパリッと仕立てのよいスーツを着こなし、柔らかなのに隙のなさそうな裕哉の、その私生活の場所は唖然とするほど散らかり放題だったのだ。
汚いと言うよりは、散らかっている。
靴は何足も出っぱなし。畳んだだけで止めもしない傘が適当に置かれている。
玄関からリビングへと続く廊下には積んだままの新聞紙や雑誌が、一部なだれを起こしてバラバラと散らばっている。
色々と言いたいことを呑み込んで、裕哉に続いてリビングへと入った私は、すんでのところで叫びそうになった。
(泥棒!? 荒らされている!?)
キャビネットの扉は開いたまま中身が溢れ出しているし、床の上にも見事に散らかり放題。泥棒が荒らして行ったとしか思えない。
立派なダイニングテーブルの上は書類やペットボトルや何やらかんやら積み上がっているし、上質そうなソファーには服が散乱している。床には紙袋や資料と覚しき雑誌、服にタオルに……どうして大きいぬいぐるみが!?
そんな乱雑な空間の中を、裕哉は平然と進み、奥の部屋の扉を開いた。