では、同居でお願いします
「紀ノ川さん、大丈夫ですか？　意識はありますか？」

「……僕なんか……絶対にダメだ。もう終わりだ。せっかく井波さんに相談に乗ってもらったのに……」

どうも様子がおかしい。様子というか言動がおかしい気がする。一体どうしてしまったのだろうか。

「あの……何を言っているのですか？　相談って……」

恋愛相談を受けた覚えはあるけれど、それ以外には特に心当たりはない。

「紀ノ川さん、落ち着いてください。そしてなんの話をしているのですか？」

落ち着いた声で問いかけると、裕哉の腕の中の紀ノ川さんが、半分死にかけたような魂の抜けた顔をこちらに向けた。

「彼が……彼が……彼女の新しい彼氏です」

「え？　彼が彼女の彼氏？　ん？」

切れ切れの紀ノ川さんの言葉を頭の中で整理する。

（彼？　彼って裕ちゃんのこと？　彼女の新しい彼氏？　彼女って誰？）

戸惑う私に紀ノ川さんは絶望した目で語る。

「佐和乃さんの彼氏が……井波さんの従兄弟だったなんて……」

消え入りそうな声だったが、私ははっきりとその名前をとらえた。

「…………佐和乃さん！！？」

つまり、以前紀ノ川さんから恋愛相談を受けた相手が、佐和乃さん、つまり裕哉の彼女だと？

「ど、どういうこと？　紀ノ川さんがずっと好きで諦められないって言っていた相手の女性が佐和乃さんってこと？」
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