では、同居でお願いします

「ここの部屋、空いてるから海音ちゃんが使ってくれていいよ」

「あ、ありがとう……」

困惑しながら、落ちている物たちを踏まないように奥へ進み、裕哉が開いてくれている部屋の中を覗き込んで、今度は我慢できずに叫んでしまった。


「全然、空いてない!!」


部屋の中は、コートや服、ゴルフの道具、健康器具らしきものなどで溢れかえっていたのだ。


「まあ、今から荷物は片付けようと思ってね」

「今から!? あと一時間でトラックの荷物届くよ!?」

「うん、だから一時間で片付けよう。このままじゃ海音ちゃんのベッドとか入らないよね~」

(ね~、じゃないよ!!)

こんな暴風が吹き過ぎた部屋の持ち主が、一時間で片付けられるはずもない! 
絶対にこの人は片付けられない!

「裕ちゃん…………家事……」

「うん、苦手。だから海音ちゃんが来てくれて助かる。片付けてくれるよね?」

そうか……。
そう言う意味だったのか……。
言ってたね、家事が苦手だって。

すっごく見たくないけど、シンクとか大変なことになってそうだよね。
うん……でも迷っている時間はないよね。トラック来ちゃうから。

「んんん!! よし!」

ふんっと鼻息を荒く吐き出し、私は腕まくりをした。

「タイムリミットは一時間。ただ今より、部屋の片付けを開始します」

「よろしくね~」

ニッコリと極上の笑顔を見せた裕哉の顔は、見とれるほど魅力的だったけれど、どこかのんびりした空気に、私は深いため息をこぼしたのだった。
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