では、同居でお願いします
黙り込んでいる紀ノ川さんと一緒に、私も押し黙って裕哉の話に耳を傾ける。
裕哉は丁寧にゆっくりと話してくれた。
「夕凪杯の予選で、僕は自らの読み違いで負けてしまいました。勝てば予選通過して、夕凪杯でプロの方と戦えるはずでした。自信もあったのに、本当につまらぬミスで負けただけに、僕の落ち込みは相当なものでした。海音ちゃんは覚えているかな? 僕が酔っ払って帰ってきた日のこと」
問われて、すぐに思い出す。
珍しく裕哉がひどく酔っ払って帰ってきて、抱きついてきたことを。
その日は手だけ握らせてと言いながら、ベッドで抱きしめられてしまったのだ。
忘れられるはずがない。
(そっか、あの日、タバコの匂いもしていたけれど、そんなことがあったんだ)
よほど悔しかったのだろう、やけ酒を飲むようなタイプではない裕哉が、深酒をするほどに、本気で将棋を指していたのだろう。
「ところが翌日、内海名人の内弟子の方から連絡をいただき、名人が会いたい、特別枠で夕凪杯に出てみないかと誘っていると言われ、僕は一も二もなく待ち合わせに出かけました。そして、そこで佐和乃さんを紹介されました」
夕凪杯の特別枠出場の手続きを終えてから、名人から紹介されたんです、と裕哉は苦笑いを浮かべる。
裕哉は丁寧にゆっくりと話してくれた。
「夕凪杯の予選で、僕は自らの読み違いで負けてしまいました。勝てば予選通過して、夕凪杯でプロの方と戦えるはずでした。自信もあったのに、本当につまらぬミスで負けただけに、僕の落ち込みは相当なものでした。海音ちゃんは覚えているかな? 僕が酔っ払って帰ってきた日のこと」
問われて、すぐに思い出す。
珍しく裕哉がひどく酔っ払って帰ってきて、抱きついてきたことを。
その日は手だけ握らせてと言いながら、ベッドで抱きしめられてしまったのだ。
忘れられるはずがない。
(そっか、あの日、タバコの匂いもしていたけれど、そんなことがあったんだ)
よほど悔しかったのだろう、やけ酒を飲むようなタイプではない裕哉が、深酒をするほどに、本気で将棋を指していたのだろう。
「ところが翌日、内海名人の内弟子の方から連絡をいただき、名人が会いたい、特別枠で夕凪杯に出てみないかと誘っていると言われ、僕は一も二もなく待ち合わせに出かけました。そして、そこで佐和乃さんを紹介されました」
夕凪杯の特別枠出場の手続きを終えてから、名人から紹介されたんです、と裕哉は苦笑いを浮かべる。