では、同居でお願いします
荷物を運び込むスペースを作るだけで一時間かかったが、所詮リビングの隅に移動しただけになってしまっている。

「引っ越し荷物が落ち着いたら、徹底的に片付けないと……」

通路確保の為に床に散らばる雑誌を掻き集めながら、後悔が滲んでくる。

「海音ちゃん、お疲れ様。やっぱり二人だと早いよね。コーヒーでも飲む?」

散らばる服を集めて洗面所に運んだだけの男が優しく問いかけてくれた。

「早いよねって……裕ちゃん、ほとんど……いえ、うん、じゃあコーヒーお願いします」

とりあえず寄せただけではあるが、それなりに床は綺麗になったので、少し休憩をしようとお願いをした。

「あれ? 僕のスマホそこらへんに落ちてない?」

「スマホ? あ、テーブルの下に」

裕哉がいつも使っているスマホを拾い上げ手渡す。

「ありがとう。じゃあコーヒー注文するね」

「……待って」

「え?」

ガッとスマホを握る裕哉の手をつかんで止める。

「注文するって、どういう意味?」

「意味って……近くのカフェから運んでもら――」

「ない!! それはない!!」

わざわざカフェから宅配? 
コーヒー一杯で? あ、今は二杯か。

ないない! ルームサービスじゃないんだから、それはない! カフェに迷惑すぎる!

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