では、同居でお願いします
「コーヒーぐらい自分で淹れるでしょう?」
「ええ? 僕は淹れないよ?」
「まさか、今まで一度も?」
「うん、ないね」
……この人、どうやって今まで一人暮らしをしてきたのだろう。
「ご飯は?」
「外食か面倒だと食べない」
「洗濯は?」
「宅配のクリーニングか、面倒だと買い足す」
「掃除は?」
「年三回業者に来てもらうけど、普段はこの有様」
だよね~、と納得。
いやいやいや! 納得できない!
そこまでするなら、いっそホテルにでも住んだらどうなのよ。マンションで住む必要あるの!?
「夜中にコーヒー飲みたくなったらどうするの?」
「面倒だし諦める」
「……でしょうね」
だいたいわかった。
この人は、ダメだ。ダメな部類の人だ。
全てを他人にお任せして生きているタイプの人だ。
仕事バリバリ、リーダーシップ発揮、気遣い満点の若社長の私生活は、どうにもならないダメ生活だった!!
騙された。完全に騙されていた。
これは危険かもしれない。
このタイプと一緒になれば、何から何までお世話をしなければならないだろう。
イヤな予感がジワジワと迫る中、ピンポーンとインターホンが鳴った。
「引っ越しのお荷物、お届けに参りましたぁ!」
明るく元気なお兄さんの声が、最後通牒のように響いた。