では、同居でお願いします
「だったらさ、やっぱり僕と一緒に住もう」

「……はあ?」

恋愛に踏み込むのが怖いと言ったのに、一緒に住もうとのたまう裕哉の思考回路が読み取れない。

(やっぱり……世話をして欲しいのが最優先なんだろうか)

結局、裕哉の結婚に対する概念は、同居と同意なのかもしれない。

そんなことを考えていた私の髪を裕哉は優しく撫で下ろしてくれた。


「時間はたくさんある。急がないから、ゆっくりと僕との関係を築いてくれればいい。側にいて僕のことが信じられるようになったら、その時に返事をくれればいい。海音ちゃんのペースに僕が合わせるから、ゆっくり歩こう。海音ちゃんを一人にしない、ずっと側にいて僕が守るから」

「……裕ちゃん」


なんて甘い言葉なのだろう。


こんなことを言われて、心が痺れてしまう。じんわりと指先まで甘さが行き届き、体温を上昇させる。

「さっきも言ったけど、家事をして欲しいからじゃないよ。そんなのはハウスキーパーを頼めばいい。僕は海音ちゃんに側にいて欲しいんだ。側で守りたい。離れていたら、常に心配してしまう」

驚いて裕哉の顔を見上げると、裕哉がこちらを見下ろしていた。
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