では、同居でお願いします
想いを伝え合った後、私たちはなぜかお互いに照れて俯き言葉を失った。

いい歳をして告白しただけでこんなに恥ずかしくなるなんて、どれほどお互いに経験不足なのだろうと呆れてしまう。

「海音ちゃん、とにかくご飯食べに出ようか、お腹空いたよね?」

(ご飯とか気にしてたの!?)

確かにお腹は空いている。

時計を見上げれば、もう九時前だ。紀ノ川さんと話していたりしたので、案外時間が過ぎてしまっていたが、この甘くも緊張した空気を見事にぶっ壊す裕哉に笑えてしまう。

もしやこのまま……などと考えていた自分が恥ずかしいではないか。

(でも……裕ちゃんは本当に待ってくれるつもりなんだ)

無理強いをしたり性急にことを進めようとは考えていないのだろう。

「海音ちゃんは何が食べたい? 希望がないなら僕が適当に選んでもいいよ」

「うん、裕ちゃんにお任せする」

私の返事を聞いた裕哉はホッと頬を緩ませた。

緊張していたのだろうことが伝わる。

勝手に裕哉ならたくさん彼女もいて恋愛経験も豊富で、女性の扱いなどお手のものだなんて考えていたけれど、意外にうぶだったようだ。

「じゃあ、行こうか」

「待って、化粧を直さないと酷い顔していると思う」

「いいよ。海音ちゃんは何もしなくても可愛いから。泣き顔とかもう堪らないほど可愛い」

「なっ……!」

急に甘い言葉を言い出す裕哉に面食らい口をぱくぱくとさせてしまった。
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