では、同居でお願いします
「本当に可愛らしいわ。モデルさんのような現代的な美人を想像していましたが、こんな素直で可愛らしい感じの方だったなんて」

「……え?」

彼女の言葉の意図が、なにげに酷い気がする。

(それは……田舎くさいと言われていますか?)

背も高くスタイリッシュな裕哉の彼女ならば、そりゃあモデルのようなとびきり美人を想像しても間違いはない。

(それがこんなちんけな田舎娘で、ご期待に添えずすみませんね)

舞い上がった自分が惨めだ。思わずむっとしてしまう。
しかし彼女は天然なのか、屈託なく続ける。

「裕哉さんには絶対に井波さんのような方が似合うと思っていましたの。並べばわかるわ。お二人がこれ以上ないほど似合っているって。ビジネス戦士の裕哉さんには癒やし系の人が必要なんだって思います。井波さんはとても優しい空気をお持ちですよね」

「……え?」

誉めてるのか貶しているのか、どう判断していいのかさっぱり理解できない。

たいがい、私も紀ノ川さんのことを責められない。さっきから「え?」しか言えていない。

ところが同士のはずの紀ノ川さんが唐突に話に加わる。

「そうです。井波さんはとても温かな雰囲気を持つ女性で、僕も初めてお会いしたときから素敵な人だなぁって思っていました。本当に可愛くて素敵ですよね」

ただでさえ口べたなのに、急に参戦してきてそんなことを言うものだから、佐和乃さん瞳がきゅうっと引き絞られた。
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