では、同居でお願いします
仕事中でも内線までかけてくる始末。

その時はさすがに(どんだけ気になってるのよ、この人は!)と受話器を叩き付けて切りたくなった。

それでも裕哉はめげずに今日も問いかける。

「僕は海音ちゃんが一人で住んでいることが心配で……あっ!」

「い、いきなり何? 大きな声を上げて」

「僕、いいこと思いついた!」

目を輝かせながらこちらを見下ろしてくる裕哉の無邪気な笑顔に私は思う。

(絶対ろくなことじゃない!!)

小学生の輝きを秘めた瞳は、よく言えば少年の輝き。
悪く言えば……いや、正直に言えば、後先考えない思いつきに満ちあふれた輝きだ。

きっと小学生男子の親ならば、こんな輝きを見たら間違いなく警戒するだろう。

「僕がさ、海音ちゃんのマンションでしばらく一緒に暮らすよ!」

「はい、出ました。思いつき」

やっぱりね、と言ってしまった。

「あのね裕ちゃん。よく聞いてね。私がすぐに一緒に住まないって言っているのはどうしてか説明したよね?」

いつから私は母親になったのだろう。彼に向き合う時、もうそれ以外の何者でもない。


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