では、同居でお願いします
「私はね」と言った後、諸岡さんはしばらく沈黙を落とした。
名古屋出張の裕哉に今回は同行しなかった諸岡さんに、会議室に呼び出された私は、固唾を飲んで彼の言葉の続きを待つ。
部屋には二人きり。静かすぎる時間がいやが上にも緊張を呼び起こす。
本気なのかどうなのか怪しいところではあるが、好きだと伝えてくれた諸岡さんには、裕哉とのいきさつをきちんと話しておいた。
そして、また同居することを昨日決めたと、私の口から伝えたのだ。
裕哉は「僕から伝える」と言ってくれたけれど、諸岡さんと私の間の問題だと思ったから、このことは私が直接伝えたかった。
残酷なことを言っているのかもしれない。
どれほどの想いを私に対して持っていてくれたのかはわからないけれど、本気で想ってくれていたのなら、裕哉とのことを聞かせるのは、彼にとって残酷な仕打ちだろう。
だから、今、二人きりで向き合いながら私は酷く緊張していた。
沈黙を落としていた諸岡さんはおもむろに私を見つめ、口を開いた。
「私は、負けませんよ」
「……負けない……ですか?」
決意したような諸岡さんの言葉の意味を計りかねて眉根を寄せた私に、はっきりと告げた。