では、同居でお願いします
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週末、私は裕哉の部屋に戻ってきていた。
部屋の片付けをあらかた終えた後、二人でソファーに座り、ひと息ついたところだ。
「海音ちゃん、こうしてまたこの部屋に海音ちゃんがいるなんて、僕は夢のようだよ」
「そうだね。私も……また一から片付けることになるなんて……悪夢のようだったよ」
「うん、おかげで綺麗になったね」
(うんじゃないよ! 聞いてた? 悪夢だって言ったのに)
本格的に引っ越すのは月末に決め、今はとりあえず部屋の掃除に来ていたのだ。
裕哉の部屋は、初めてここに来た時と遜色ないほど散らかっていた。
怒るなと最初に断られていたが、盛大な溜め息を零してしまったのは許して欲しい。
「ねえ、今夜は当然泊まっていくよね?」
「ベッドもないのに泊まれないでしょ」
「え? ベッドって……もちろん今後は僕と一緒に寝てくれるんだよね?」
「は?」
さも当然のように告げられ、私は目を丸くしたが、裕哉も目を丸くしていた。
「え? 違うの? もう結婚前提だし、一緒に寝るのが当然じゃないの?」
――あなた……もうとっくに成人しているよね?
あまりにも無邪気に、幼子が母に問うような言い方に、思わず言いそうになった。
私は頭に手を当てながら、「え……っと」と言葉を選ぶ。