では、同居でお願いします
「裕ちゃん……その……一緒に寝るって……どういう意味で言ってるの?」

「ん? それは……そ、そんなことを……言えといわれても……口にするのはちょっと恥ずかしいんだけど」

耳まで真っ赤になっている裕哉の姿に、私は焦る。

(やっぱりそういう意味なの!? ゆっくりって言ったのはなんだったの!? 見解の違いがあったの?)

眉をひそめた私に、裕哉は盛大に照れながら言いよどむ。

「こう……海音ちゃんを抱きしめて眠れたらいいけど……イヤなら、抱くのはナシでいい! 並んで眠るだけでいいんだ。ほら、前は酔った勢いで抱きしめてしまったけど、イヤだったのかな、ほんとごめん!」

真っ赤になったまま、あわあわと手を胸の前で振る裕哉に、私はふと思う。

(……もしかして、裕ちゃんの言う「抱く」の意味が、私の想像しているのとは違う?)

唖然として、それから私はクスクスと笑ってしまった。

「み、海音ちゃん?」

笑い続ける私に戸惑いの目を向ける裕哉は、本当に子どものようだ。
どうして笑われているのか全く理解できていない瞳は無垢そのもの。

(もう……何なの、この人。全然大人じゃないよ)

仕事をしている時の姿や見た目との違いがありすぎる。
けれどそれがたまらなく好きだ。

可愛い裕哉がどうしようもなく好きで、私は笑いながら裕哉の腕に頬をそっと寄せた。


「じゃあ泊まっていく。……だから抱きしめて。抱きしめ合って一緒に眠ろうね」


言った瞬間に柔らかく抱きすくめられた。
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