では、同居でお願いします
「社長、明日の予定ですが……聞いていますか?」
私の言葉に裕哉はニコニコとただ笑う。
社長室の威厳ある机と椅子がそのにやけ顔で台無しだ、
結婚を決めてからずっとこんな感じで仕事にならない。
「もう、ニヤニヤしていないでちゃんと聞いてください。仕事にならないでしょう」
「だって仕事している海音ちゃんの姿を見納めだと思うと、一秒でも長く見ていたい。いや、家でもずっと見ていたい!」
「そんなことを力説しない!」
こんな調子で私が側にいると仕事にならない。
「じゃあこの件は諸岡さんから伝えてもら――」
「わああ、聞くから聞くから! だからここにいて?」
はああ、と大きな溜息をこぼす。
公私混同も甚だしい。いつの間にやら会社でも私の前だと子どもになる。
こんな裕哉に呆れながらも、それが可愛いと思ってしまう自分の脳内は相当腐って来ているのだろう。そんな自覚がある。
「もう……」
私はグッと顔を寄せて裕哉の耳元で囁いた。
「ちゃんと聞かないともうキスしませんよ」
「聞く聞く! メチャクチャ聞きまくる! 何が何でも聞くから!!」
あまりにもの必死さにプッと吹き出す。
その焦りようがまた可愛らしい。裕哉のギャップにはいつまで経ってもほだされてしまう。