では、同居でお願いします
「では言いますね」

私が体を起こそうとした瞬間、腕を引かれいきなり頬にキスされた。

「隙アリだよ」

ガバッと体を起こした私は、頬を押さえながらフルフルと震える。

してやったりの顔でこちらを見ている裕哉に、思わず大きな声を上げてしまった。

「会社で何してんの!! 隙アリじゃない! ……もう二度とキスしない!」

「え、ちょ、待って海音ちゃん! 違う、あれはちょっとしたいたずらって言うか、あの、ごめんなさい!」

「もう知りません!」

クルッと踵を返した私に、裕哉は盛大に慌てる。

あたふたと言い訳をしている裕哉の声を背中に聞きながら、私は実は笑っていた。


裕哉と過ごす時間はどの時間も幸せだ。


こうしてただ話をしているだけでも、家で世話をしている時も、そして一緒に眠る時も……。


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