では、同居でお願いします
「先にお風呂入る? すぐに準備するね」

バスルームに向かおうとした私の腕を、裕哉は掴むなりいきなり引き寄せ、そして背中からキュッと抱きついてきた。


「……っ! 裕ちゃん!? な、な、な!?」


いきなり抱きしめられて心臓がドクドクと早鐘を打つ。
裕哉の腕は想像以上に筋肉質で、そのことにドキドキが止まらない。

(こ、これは何! 何が起こってこうなってる!?)

訳がわからなくて硬直してしまった私に、裕哉が甘い声で言った。

「海音ちゃん、いいお嫁さんになりそう」

「お、お嫁さん!?」

声が裏返った。

「海音ちゃんが誰かのお嫁さんになるの、すっごいイヤだなあ」

「ええっ!」

そ、それは……どういう意味ですか……と、問い返せない。


(まさか……まさか……)


まさか私のことを……?

カッと顔が熱くなる。
ドキドキしている心臓の音が裕哉にも聞こえてしまいそうになる。

(どうしよう……もし裕ちゃんがわたしのことを……そんな風に思っていたら……)


――嬉しいかも……。


すぐに答えは出た。

(すごく嬉しいかも……)

子どもの頃からきっと憧れはあった。
素敵なお兄さんだなと思っていたのは覚えている。

会社で仕事をしている裕哉には人の目を惹きつける独特の存在感があり、幼い頃に抱いていた淡い憧れだけではない感情が、自分の中で高まるのを最近は抑えられずにいた。

だから……嬉しいと言う気持ちが溢れ出す。


息が苦しいほど胸が高鳴る。


裕哉の次の言葉を、我知らず息を止めて待っていた。
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