では、同居でお願いします
「ゆ、裕ちゃん? だ、大丈夫?」

舌がもつれてしまう。それでもなんとか問いかけることができた。

「……大丈夫じゃない」

「えええ! お水、持ってくる」

裕哉の腕から抜け出そうとするが、更にグイッと力を込められ、私は裕哉に閉じこめられた。

「このまま部屋に連れて行って」

少し甘えた声音で囁かれて、キュッと胸の奥が痛みを抱いた。


あああ、このダメ男は……。


嘆息してしまう。

抱きしめながら甘えた声でおねだりするように告げたら、相手がどう感じるかなんて考えもしていないのだろう。
タチが悪いとはこのことか。

肩を貸すというよりは、ほとんど抱き合った姿のまま、裕哉の部屋へと運び込む。

裕哉をベッドに座らせてから、水を取りに行こうと立ち上がったが、また強く腕を引っ張られ、腰の辺りをギュッと抱きしめられた。

「海音ちゃん、今は側にいて欲しい……」

「なっ!」

なんてことを軽々しく言うのだ! と叱りつけたくなる。
ただ裕哉の声はやけに沈んでいてどこか痛々しく、放っておけない気持ちになる。

(何があったんだろう?)

考えるとゾワゾワと肌を這い昇るような不快感が生まれ、すぐに気持ちを切り替える。
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