では、同居でお願いします
聞きたいことが溢れているのに、言葉にすることができない。

もし彼女の話など聞かされたら、自分の立場の惨めさを強く知らされてしまう。
もちろん裕哉の彼女気取りをしたことはないけれど、それでも単なる家政婦とはっきり突きつけられるのは怖かった。

胸が締め付けられて痛み、息が詰まる。

裕哉に抱きつかれたまま瞼をそっと閉じた途端。


「う……気持ち悪い」


裕哉が呻いた。顔色が紙のように真っ白になっている。

「ちょ、待って! え? 待って待って!」

(いやあああ、ここで吐くとかやめてよ!!)

忙しい中でも毎日頑張って掃除をしている部屋。しかもシーツと布団の洗濯はなかなか大変な作業。
諸々な事が脳内を駆け巡り、私は無理やり裕哉の腕を振り払ってビニール袋を取りにダッシュした。

「裕ちゃん、吐くならここに!」

凄い勢いでビニール袋を手に戻ってきた私を見て、裕哉はふわりと微笑んだ。

(うっ……カッコイイ……)

ほんのりと赤く染まった頬、いつもより柔らかで潤んだ瞳、濡れたように色付く唇。
見惚れるほど綺麗な裕哉の姿に、棒のように立ちすくんでしまった。

(いや、今はそれどころじゃなかった!!)

「裕ちゃん、ビニール袋!」

裕哉の手を取り、袋を握らせようとしたが、逆に手のひらを包むように握られた。
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