では、同居でお願いします
お酒を飲んでいるせいか、裕哉の体はやけに熱くて、じっとしていると火傷してしまいそうに感じる。静かに身動きしてみたが、すぐに巻き付いた裕哉の腕が力を込めて閉じこめようとしてくる。
ふう、と深いため息をこぼした。
綺麗に整った裕哉の顔を見つめながら、先程言った裕哉の言葉を胸に押し込める。
(そうだよね。裕ちゃんにとっては「助かる」程度なんだよね。仕事も家事もしてくれる同居人なんて。もしかして、今の状況は、彼女の身代わりなの?)
棘のある花を踏みつけたような、じんわりとした鈍い痛みが体を締め付けた。
――もうごまかせない……
裕哉の逞しい腕の中にいて、私ははっきりと悟る。
いつの間だったのだろうか。再会した時からかもしれないし、幼い頃からだったのかもしれない。
(私は……裕ちゃんのことが……好きみたい)
心の中で呟けば、苦い笑いが込み上げる。
認めてはいけない事。見ないふりをしなければいけない事。
わかっているはずなのに……今は自分の気持ちから目を逸らすことができなかった。
裕哉のこの腕が自分だけのものになればいいのになんて、そんな贅沢を願ってしまう。
(単なる部下で家政婦なのに。しかも従兄弟で)
どの条件をとっても、裕哉と付き合うことなどできるはずもない。
しかも今は彼女もいるようだ。
裕哉に抱きしめられてこんなに切なくなるなんて思ってもみなかった。