では、同居でお願いします


なに、それ。


思わずボソリと呟く。


買い物を終えて玄関を開けた私を、裕哉は満面の笑みで迎えてくれ、さらにこう言った。

「おかえり! 海音ちゃん、買い物行ってたんだ。お腹空いたね。今から準備するの? 料理、手伝うよ」

(なに、これ? 誰、この人?)

今まで同居二カ月ちょっと。

一度たりとも「手伝い」なるものをしたことがない人が、いきなり料理の手伝いを上機嫌で申し出る。

イヤな予感しかしない。
絶対に手伝わせてはいけない流れだ。

鍋焦げ焦げのギャグマンガばりの失敗をするか、盛大に手を切って病院沙汰とか、とにかく大変なことになるのは火を見るよりも明らかだ。

私の手から買い物袋を奪い去って、リビングに向かう裕哉のシャツの裾を慌てて引っ張った。

「いい! 裕ちゃんはゆっくりしてて。すぐに作るから、ね?」

「え~、でも僕、今はすっごく手伝いたい気分なんだ。これからは僕も家事を頑張るよ」

「そんな気分とか、全然いらないから」


なんの気持ちの変化だ。

気分で手伝おうとか、絶対にやめていただきたい。

これから家事を頑張る? 絶対に余分な家事が増える結末しか見えない。


いそいそとキッチンに向かう裕哉を無理やりソファーに座らせ、買い物袋を奪い取った。
< 43 / 233 >

この作品をシェア

pagetop