では、同居でお願いします
なに、それ。
思わずボソリと呟く。
買い物を終えて玄関を開けた私を、裕哉は満面の笑みで迎えてくれ、さらにこう言った。
「おかえり! 海音ちゃん、買い物行ってたんだ。お腹空いたね。今から準備するの? 料理、手伝うよ」
(なに、これ? 誰、この人?)
今まで同居二カ月ちょっと。
一度たりとも「手伝い」なるものをしたことがない人が、いきなり料理の手伝いを上機嫌で申し出る。
イヤな予感しかしない。
絶対に手伝わせてはいけない流れだ。
鍋焦げ焦げのギャグマンガばりの失敗をするか、盛大に手を切って病院沙汰とか、とにかく大変なことになるのは火を見るよりも明らかだ。
私の手から買い物袋を奪い去って、リビングに向かう裕哉のシャツの裾を慌てて引っ張った。
「いい! 裕ちゃんはゆっくりしてて。すぐに作るから、ね?」
「え~、でも僕、今はすっごく手伝いたい気分なんだ。これからは僕も家事を頑張るよ」
「そんな気分とか、全然いらないから」
なんの気持ちの変化だ。
気分で手伝おうとか、絶対にやめていただきたい。
これから家事を頑張る? 絶対に余分な家事が増える結末しか見えない。
いそいそとキッチンに向かう裕哉を無理やりソファーに座らせ、買い物袋を奪い取った。