では、同居でお願いします
クスクスと笑う私に、裕哉は不安そうに目を細める。
どこか心細そうな表情は、まるで幼い男の子のようで、過保護に甘やかしたくなってしまう。

 ――どうしようもないよ……

どうやら、思っていたよりも重症のようだ。

この人が好きで好きで、堪らなく愛しい。

私は手を伸ばすと、そっと裕哉に抱きついた。

「み、海音ちゃん!?」

驚く裕哉の胸の音がトクトクと耳に心地良い。

「私……裕ちゃんのお世話をするのは嫌いじゃないの」

「……うん」

「でもね、これからは、私は一緒に住むべきじゃないと思う。いくら従兄弟だからって同居しているのは、きっと相手の人にも迷惑だよ」

「海音ちゃん? 相手の人って……もしかして……恋人のことを?」


(ああ、聞きたくなかった。裕ちゃんの口から、恋人だなんて言葉を……。でも、私……恋人の存在、知っているよ)


体を起こすと、裕哉を見上げる。

離れてしまった温かな体温が切ない。けれど、この体温を受け取るのは私じゃないと、はっきりしている。

「うん、そうだよ、知ってる。いくらお世話をするだけだって言っても、恋人にとったら異性と同居しているってこと、やっぱり気分良くないから」

だから出て行くね、と告げて私はすぐに裕哉に背を向けた。


胸が一杯で泣いてしまいそうだったから、すぐに部屋に駆け込み、ベッドに倒れ込んだ。


(ごめん、裕ちゃん。もっと上手な言い方あったはずなのに、私……うまく言えない。彼女と幸せになって欲しいって、まだ言えないよ。ごめんね)


心の中で謝りながら、泣かないように枕に顔を押しつけて目を閉じた。
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