では、同居でお願いします


翌日、出勤した私はいつものように諸岡さんと今日の打ち合わせをする。

諸岡さんはいつ見てもきっちりとしていて隙がなく、ピンと張り詰めたような空気感を持つ。その緊張感が私は嫌いじゃない。

「本日の午前中、この後すぐですが、私と社長は出かけます。午後からのT社との打ち合わせには戻りますので、それまでに資料を揃えておいていただけますか?」

「アプリの共同開発の件ですね」

「はい。営業の作った資料も一緒にプリントアウトしておいてください」

「わかりました」

「それから……」

珍しく、諸岡さんの言葉が淀む。

続きを待つように小さく首を傾げた私から、視線を軽く逸らせて諸岡さんは声のトーンを下げた。

「今夜、会食の予定が入ると思いますので、定時で帰っていただいて結構です」

「打ち合わせですか?」

「ええ……まあ、いえ、少し……プライベートです」

言い淀む諸岡さんの言葉にまた心が落ち込みそうになる。


プライベートの意味するところは、きっと彼女の関係だろう。

噂ではどこかの令嬢だとか言われているから、会社関係で繋がりのある相手かもしれない。

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