では、同居でお願いします
「……社長、そろそろ行かれた方が……」
「ああ、わかっている」
頷いた裕哉だったが、しばらく黙って私を見ていた。
ぎこちない沈黙が流れる。
しばらくの間を置いて、裕哉は何も言わずに背を向けて出て行ってしまった。
ふうう、と大きな息を吐き出す。
今まであった裕哉との間の穏やかな空気は完全に消え失せ、見えない壁に遮られたようだ。
のろのろと動き出した私は、午後から必要になる資料を整えるのと同時に、自分の机周りの整理を始める。
いつ、「もう来なくていい」と言われても大丈夫なように、身の回りだけは整理しておこうと思った。
「また職探しか……」
あの地獄の日々を思い出してげんなりとする。
面接に落ちるのは、とてもメンタルを削り取られる。自分というものの商品価値のなさを突きつけられてしまうからだろう。
人は誰かに受け入れてもらうことで、自分の価値を知る。
誰かに評価されて初めて自分に価値があることを実感する。
面接での不合格は、受験に失敗するよりももっと顕著に存在の否定を感じさせる。