では、同居でお願いします
その日の夜、何時に帰ってくるかわからない裕哉をソファーに座って本を読みながら待っていた。
本当は部屋に籠もってしまいたかった。
上機嫌で帰ってくる裕哉の姿なんて見たくもなかったし、彼女と会って帰ってきた裕哉を出迎えるのも辛かった。
「でも、あと四日しかないから……」
ここで一緒にすごせるのもあと四日。
もしも裕哉が結婚してしまったとしても、ここでの思い出は大事に取っておきたい。
本当に短い間だったけれど、だからこそ貴重な時間だった。
夜、十一時過ぎにマンションに帰ってきた裕哉が、リビングに入ってくるなりスッと封筒を差し出した。
「なに、これ?」
「引っ越しするなら、何かと物入りだし、これを使ってよ」
封筒の中身を見れば、一万円札が束で入っている。
少なくとも十枚二十枚ではない。
ビックリして慌てて封筒を裕哉に押し返す。
「ダメダメ! こんなのもらえないよ!」
「どうして? 引越祝いと思ってくれたらいいから」
「お祝いにしては金額がおかしいって! ビックリするわ」
「え~、わりと正当だと思うけどな」
(いえいえいえ! 全然正当な金額ではありませんからね?)