では、同居でお願いします


やめて、親しげに話しかけてこないで。

手を伸ばして腕をつかまないで。

全身が、細胞の全てが拒絶しているのに、指先一つ動かせない。

血の気が引いていく音が、耳の奥で聞こえる。


「こんな所で再会するなんて――」

――運命かもな。


クッと口元を引き上げながら告げた相手の言葉に、吐き気をもよおしそうになって私は身体を強ばらせる。

男は、全然変わっていなかった。

尊大で自信に満ち、誰もが自分を見ているとでも思っているような眼差し。


吐き気がする。


こんなヤツに、また出会ってしまう自分が悔しかった。

「なあ、みお。今、どこ住んでんの? 学生? あ、もう仕事してのか?」


話しかけないで。


もう……あなたのことなど消し去った過去の記憶。

声も聞きたくないのに、私は凍り付いたように動けなかった。
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