では、同居でお願いします
会いたいわけなどない。
そのことは、自分がよくわかっているでしょう?
どの口が、そんなバカなことを聞いてくるのか。
あの頃、酷いことをしておいて、今更私の前に顔を出せるなんて、正気とは思えない。
「……もう私の前に現れないでよ。見るのも声を聞くのもイヤなの」
掠れる声は震えていた。
「おいおい、そんなこと言うなよ、さみしーね。あんなに俺のこと好きだったくせに」
「好きじゃない。騙されたのよ」
「いいじゃん。こうして都会暮らしできるようになったんだからさ、結果オーライじゃね?」
でさ、と男は続ける。
「みお、部屋入れてくれよ」
「入れるわけない。早く目の前から消えてよ」
「冷たいなあ。入れてくんなきゃ騒ぐぞ。おまえがここに住みにくくなるけどいいのか? あ、あと会社にもお邪魔させてもらうか」
「やめて!」
一瞬で青ざめる。
会社にこんな男が来るなんて考えるだけでもおぞましい。
せっかく少し打ち解けた諸岡さんに軽蔑の眼差しを向けられる。
社長に……裕哉に、どれほど白い目で見られることか。
考えただけで気が遠くなりそうだった。